認定特定非営利活動法人

NEJ研究グループの代表理事を務めることになった前門戸です。
貫和敏博先生、小林国彦先生に引き続いての代表理事です。NEJ研究グループ（North East Japan Study Group）は、胸部悪性腫瘍を中心に多施設で臨床試験を行っていく研究グループです。

NEJ研究グループ（NEJSG）の成り立ちは、EGFR遺伝子変異肺癌と深く関連しています。2002年に非小細胞肺癌に対し分子標的薬ゲフィチニブが発売され、その中で劇的な効果を生む患者群があり、その方々の腫瘍にEGFR遺伝子変異があることが2004年に報告されました。いち早くそのEGFR遺伝子変異の検出方法を開発したのがNEJSGの中心メンバーであり、当時、埼玉医科大学に所属していた萩原弘一先生であり、この検出方法を利用して臨床試験を行っていくことのために臨床研究グループとしてNEJSGが立ち上がりました。
最初の試験であるNEJ001試験は小林国彦先生、井上彰先生がEGFR遺伝子変異肺癌のために動けなくなってしまった患者さんにEGFR遺伝子変異に効果がある分子標的薬ゲフィチニブ投与し腫瘍が縮小し歩いて帰れるようになる効果を明らかにした臨床試験でした。次に取り組んだNEJ002試験はIII相試験です。当時は全国でも大規模臨床試験（III相試験）を行える臨床研究グループは限られていて、III相試験に挑戦した初めての試験がNEJ 002試験でした。NEJ002試験ではEGFR遺伝子変異肺癌に対して従来の標準療法であった化学療法とゲフィチニブを比較しゲフィチニブの効果を証明しました。
その結果はニューイングランドジャーナル・オブ・メディスン（NEJM）という一流誌に掲載されNEJSGとしても幸先の良いスタートを切ることが出来ました。最近ではEGFRに対する分子標的薬と化学療法との併用試験で米国癌治療学会雑誌（JCO）に注目される成果を挙げ、ガイドラインに掲載され、さらに、第3世代の分子標的薬と化学療法との併用試験の業績に繋がっています。

臨床試験は、ある治療方法が本当に患者さんにメリットがあるかどうかを患者さんに協力いただき、科学的手法に則り解き明かしていく方法です。NEJSGはそれに加え、遺伝子変異の検出方法をはじめ基礎科学の研究成果を融合させて研究を進めてきました。そこが我々のグループの特徴の一つでもあります。
科学の成果をどう臨床応用するか、どう患者さんに届けるかが目的となる分野がトランスレーショナルリサーチと呼ばれています。そのトランスレーショナルリサーチのマインドを持ち続けて患者さんの目線に立ってこれからも臨床研究を行っていきたいと考えています。

当初、関東、東北、北海道が中心であったグループも参加施設は全国に広がっています。また、NEJSGは肺癌研究から始まりましたが、その後、間質性肺炎のレジストリ研究や呼吸器外科の先生方が中心になって行う外科手術に関連した研究も行っています。2023年末で新たなNEJ試験には60番台が付与されるくらいまでに臨床試験が増えてきました。

昨今の臨床試験を取り巻く環境は厳しく、臨床試験を取り巻く法整備のために以前ほど容易に臨床試験を行えなくなってきています。
最も大きな問題は、臨床試験にかかるコストです。我々NEJSGは患者さんのため社会のためになる研究を行っていく所存です。賛同していただける方々、サポートいただける方々のご協力をお待ちしています。

代表理事　前門戸 任（Makoto Maemondo）